患者さんの主訴は、
「噛むととても痛い」、「頬が腫れている」
レントゲン写真を撮影
左上の第一大臼歯に根の先に黒い影が。。
歯髄診断はPulp necrosis「歯髄壊死」・・・歯の神経が死んで感染が起きている状態
根尖歯周組織診断はAcute apical abscess「急性膿瘍」・・・根尖の骨が吸収し、炎症が広がり、組織に膿が溜まっている状態
<推察として、以前深いむし歯があり、徐々に神経の生活力がなくなり、歯の中で細菌が増えることによって起こってしまったと考える>
【推奨される治療】
細菌の数を減少させ、維持することで歯を保存する歯内療法
消炎後、
根管治療を1回法で行った
根管充填後
4根管拡大・洗浄を行ったが、MB2のみ穿通できなかった
<MB2・・上顎大臼歯近心頬側第2根管:1つの根の中に2つの神経管があり、細いため発見が難しい根管 発生確率60% Cleghorn2006>
1年後
患者さん曰く、「以前ほどの痛みはないが、噛んだ時の違和感が続いている」
レントゲンを撮影すると、治療前と比較して根の先の骨は再生してきているが、MB根周りの骨の再生が不完全のため、歯科用CTで確認することにした
CBCT
MB2は独立しており、そこに病変(黒い影)が認められる
【推奨される治療】
外科的歯内療法 歯根端切除術
外科的に歯の中の感染を除去し、封鎖をして細菌の数を減少させる方法
外科治療12か月後
術前VS術後
初診時VS現在
「違和感もなく、治療したことを忘れるくらい噛めています」
いかなる症状もなく、術前に存在した病変も消失した
非外科的歯内療法(根管治療)と外科的歯内療法(歯根端切除術)を組み合わせることで、歯を保存することができた症例です。
患者さんも治療の内容をよく理解し協力してくれ、治癒までの時間を待って頂きました。
下顎の歯にも根尖病変があるため、そちらの歯の治療も報告したいと思います。
<非外科的歯内療法/外科的歯内療法は一部保険適応外になります>